CINEMA

映画レビューのページです。ネタバレがありますので、未見の方はご注意ください。


草原の輝き SPLENDOR IN THE GRASS
監督エリア・カザン 出演ナタリー・ウッド ウォーレン・ベイティー パット・ヒングル
老若男女誰もが求める「幸せ」とは何かをエリア・カザン監督が真摯に問いかける珠玉の名作です。男女の性がテーマですが、俳優陣の名演と主演二人が綺麗で清潔感があるので安心して観られます。ナタリー・ウッドの体当たり演技は特にすばらしいです。高校の同級生バッド(ウォーレン)とディーニー(ナタリー)は愛しあっていても、お互いの両親から結婚までは純潔を守るように言われています。バッドの父親は高圧的で、姉のジニーは反発して男遊びに興じ、バッドは自分の夢は叶えさせてもらえず、ディーニーの代わりに別の女と遊べば良いなどひどい事を言われます。バッドはそれを実行してしまうとそのことを知ったディーニーの精神状態がおかしくなって授業中に飛び出してしまいます。この時に習っていた詩がタイトルにもなっているワーズワースの「草原の輝き」です。“草原の輝き、花々の栄光、再びそれは還らずとも嘆くなかれ。その奥に秘めたる力を見出すべし‥”ディーニーは病院に、バッドは大学へと別れ々になってしまいます。病院で知り合った男性と婚約したディーニーは、2年半後に退院して友人たちとバッドに会いに行きますが、彼は農場で家族と共に暮らしています。彼の子供を抱くディーニーの表情に胸打たれます。ふたりは憎み合って別れたのではなく、誰の責任でもない運命の不思議な巡り合わせで今があるのですが、幸せとはあるがままの人生を生きることをお互いに納得してそれぞれの人生を歩み始めます。ラストの「草原の輝き」の詩が感動的で心に残ります。

海の上のピアニスト THE LEGEND OF 1900
ジュゼッペ・トルナトーレ 出演ティム・ロス ブルート・ティラー・ヴィンス クラレンス・ウィリアムズV世 
生まれてから一度も船から降りなかったこの世に存在しないピアニスト、1900の生涯をトルナトーレとモリコーネ(音楽)の名コンビで語られる芸術性溢れる感動作です。トランペッターのマックスがNYの「 MUSICAL INSTRUMENTS」にトランペットを売りに行くシーンが情緒たっぷりでいいですね。マックス役のB・T・ヴィンスが良い味を出しています。父親がダニー・ブードマン・T・D・レモン1900と命名するシーン、子供の時にホールのピアノを弾いているシーン(モーツァルトそっくり!)、モートンとの息づまるピアノ合戦など見応え十分です。でも何と言っても友人のマックスとホールを行ったり来たりくるくる回るピアノと一緒に踊るように演奏しているシーンは圧巻です。撮影は大変だったでしょうね〜。ティムの演奏は見事で芸術家らしくはまり役ですね。窓の外の少女を見ながら作曲をした「愛を奏でて」‥この曲を聴いていると音楽っていいな〜ってつくづく思います。音楽に恋をしてしまいます。1900が下船しなかったのは、純粋な音楽を守る自信がなかったからかもしれませんね。真の芸術家はこうでなくっちゃ!と思ったりもします。“何か良い物語があって話せる友人がいる限り人生捨てたもんじゃない”と言い残して天国に行ってしまった1900‥でも幻の名曲「愛を奏でて」と共に彼のことは友人マックスの心にしっかりと刻まれていることでしょう。サントラは名曲名演奏揃いで、何度聴いてもすばらしいです!!


アパートの鍵貸します THE APARTMENT
監督ビリー・ワイルダー 出演ジャック・レモン シャーリー・マクレーン ジャック・クルーシェン
NYマンハッタンの高層ビルに勤務するバクスター(レモン)の社員ぶりがちょっぴり風刺を効かせたコメディータッチで描かれる粋で楽しい作品です。冒頭のバクスターがタイプライターを打っているシーン(音楽に合わせて首を振ったりして)から引き込まれてしまいますね。アパートに帰ってからベッドに入るまでのパフォーマンスが楽しいやら可笑しいやら‥映画「グランドホテル」を見ようと思ったらCMばかりで‥のシーンなど、とにかくJ・レモンの名演が光っています。小道具の使い方も、ワイルダーのお洒落心が生きています。バクスターが思いを寄せるフラン(シャーリー)のコケティッシュな魅力が可愛くて、ふたりの息もぴったりです。隣室の医師(クルーシェン)がなかなか良い味を出していますね。今“隣は何をする人ぞ”の社会でこんなに親身になって介抱してくれる彼の優しさはとても貴重かもしれません。素敵なシーンはいっぱいありますけど、いちばん好きなシーンはやっぱりラスト‥フランがバクスターのアパートに走って行くところは音楽も素敵ですし、ふたりのやりとりが楽しくて見ているこちらまで幸せな気分に浸れます。この作品でワイルダーのファンになりました。他にも10作品くらい観ていますが、どの作品もユーモアがあって温かくて何度でも観たくなる名作ばかりです。


赤ひげ
監督黒澤 明 出演三船敏郎 加山雄三 山崎努 香川京子 二木てるみ 杉村春子 内藤洋子 
山本周五郎原作「赤ひげ診療譚」の映画化です。今回二度目の鑑賞ですが、やはり素晴らしかったですね。俳優陣の演技はもちろん、ひとつひとつの描写が細やかで感動的で芸術性あふれる作品に仕上がっていると思います。最初に保本登(加山)が小石川養成所の門をくぐってきて、病人たちの様子を見学するところから心打たれてしまいます。ニイデキョジョウこと赤ひげ(三船)が保本に医療の心得を教えるシーンもいいですね。病人の身体だけでなく心の中まで診断してしまう赤ひげはまさに現代の精神科医と呼べると思います。彼はけんかをしても強いので文武両道なんですね。国家の“貧困と無知に対する戦い”など政治の問題にもふれて作品に奥行きを与えています。車大工佐八(山崎)の悲しい恋物語も男女の壮絶なドラマが(雪のシーンや影絵など)芸術的に語られて素敵です。保本の初めての患者として養成所にやって来たおとよ(二木)が反抗しながらも少しずつ心を開いてゆく過程が圧巻ですね。二木てるみちゃんがすばらしい!! 赤ひげが(さじを投げずに笑)お薬を飲ませたシーンや、窓の外の雪を氷にして保本の看病をして微笑み合うシーン、おかゆを盗んだ少年との心の交流など見応え十分です。内藤洋子さんがとても可憐で可愛いです。最初、養成所をすぐに出たいと言っていた保本も赤ひげの無骨さの中に秘められた優しい人柄に惚れて、ここに残りたいと頼むラストシーンは名場面ですね。若き医師の成長ストーリーでもあるのですね。黒澤作品は他に4、5作品観てますが、「赤ひげ」はマイベストです。


ジェレミー Jeremy

監督アーサー・バロン 出演ロビー・ベンソン グリニス・オコーナー
NYの芸術学校でチェロを学んでいるジェレミー(ロビー)と、父の仕事でデトロイトから越してきたスーザン(グリニス)の運命の出会いと別れが初々しくてちょっと悲しいラブ・ストーリーです。真剣にチェロを弾いているジェレミーがとても可愛いです。チェロ弾きのゴーシュを思い出してしまいました。先生にプロの道は厳しいと言われても偉大な音楽家になりたいと思っているジェレミー‥たとえプロになれなくても好きなことに頑張ってる姿は美しいと思います。レッスンでは厳しい先生も普段は優しくジェレミーに接していて好感が持てます。そんな時に、学校でバレエを練習しているスーザンに一目惚れしてしまうジェレミーですが、ちょっと内気な彼のためにふたりの仲を取り持ってあげる友人がとても良いですね。最初はぎこちなくデートをしているふたりですが、ジェレミーの演奏会を聴いて、外見でなくジェレミーの内面を好きになってゆくスーザンがとても素敵です。お互いに身の上話をしたり、競馬を観に行ったりして、今まで友人がいなくて孤独だったスーザンとジェレミーの仲が深まってゆくところがとても綺麗に描かれています。そんな時突然の別れがやって来るのですが、気持ちが高まっている時の別れはつらいでしょうね〜。空港での別れのシーンは淡々としていますが、若いふたりの心情を想うととても切ない気持ちになるのですね。青春の淡い恋の思い出をクラシカルに上品に描いているさわやかな青春ドラマでした。


いつも心に太陽を To Sir. with love
監督ジェームズ クラベル 出演シドニー・ポワチエ ジュディ・ギースン ルル
何十年ぶりに観まして、とてもなつかしかったです。舞台がアメリカでなくイギリスで、本当は技師の仕事を希望していたと言うところが、ちょっと意外でした。主題歌を歌っているルルが出演していることも今回初めて知りました(笑)教師を通して正義感と誇り、男らしさを教示するポワチエの魅力が輝いていますね。生徒たちに紳士、淑女にならないと異性に相手にされないよと教えるシーンや、暴力は絶対いけないと身を持って教えるシーンがすばらしいです。生徒たちがストーブに悪戯をして、サッカレー先生が切れた時、職員室に戻って“こんなに早く切れるなんて‥”と嘆くシーンは「我慢強く生きよう」と言う彼の心意気が感じられる感動的なシーンですね。博物館見学の時の生徒たちの生き生きとした表情と主題歌が流れるシーンは心に残ります。先生に思いを寄せるパメラとダンスを踊るシーンも素敵ですね。ポワチエは(野のユリでも歌っていますが))歌もダンスもとてもお上手です。主題歌に“時は過ぎても思い出は一生残る。先生の恩にどう報いよう”‥と言う素敵な歌詞がありますが、多感な頃の良い教師との出会いはとても大切だとつくづく思いました。


スモーク SMOKE
監督ウェイン・ワン 出演ハーヴェイ・カイテル ウィリアム・ハート ストッカード・チャニング アシュレイ・ジャド
NYの街角でタバコ店を経営しているオーギー(ハーヴェイ)と作家ポール(ウィリアム)の友情が温かくて、お店に集まってくるお客たちの何気ない日常の会話が満ち足りた気分にさせてくれます。冒頭にポールがタバコの煙の重さの量り方について話すシーンは楽しくてなるほど思わされますね(笑)オーギーは今までに4千枚、同じ日の同じ時間、場所で毎日写真を撮り続けていて“人々の服装や顔が季節や天気によって少しづつ違っているだろう”と話すのを聞きながら嬉しそうにアルバムを見ているポールの雰囲気がほのぼのとしていて、ふたりの味のある演技がとてもすばらしいです。ポールが道で助けられた家出少年ラシードのことを心配して、オーギーに彼の面倒を頼んだりして温かい人間模様が微笑ましいですね。ラシードとガソリンスタンドで知り合った義手の男性とのやりとりも含蓄がありますね。人はそれぞれいろんな過去や悩みを抱えて生きているのだとしみじみ思わされます。昔付き合っていたルビー(ストッカード)がアイパッチをして現れるとオーギーが「キャプテン・クックになったの?」なんていうシーンも楽しいです。切れた娘役のアシュレイ・ジャドにはちょっとびっくり!ラスト、オーギーがポールに話して聞かせるクリスマス・ストーリーはトム・ウェイツの歌ととてもマッチして不思議なテイストの素敵なお話ですね。村上春樹さんの翻訳も読みましたし、小品でもこういう良質な作品に出会うと幸せな気持ちに浸れますね。


昼下がりの情事 LOVE IN THE AFTERNOON
監督ビリー・ワイルダー 出演オードリー・ヘップバーン ゲーリー・クーパー モーリス・シュバリエ
当時55歳のクーパーと27歳のヘップバーンの年の差カップルの、遊びのつもりが本物の恋に変わってゆく、楽しいラブコメディ風な作品です。全編を通して、オードリーのヘヤスタイルがとても可愛いです。衣装はジバンシーなんですね。冒頭のパリはいろんな愛で溢れているというシーンはワイルダーらしくて粋です。探偵の父親(モーリス)とチェロの音大生アリアーヌ(オードリー)のちょっと不思議な親子関係にまず引き込まれてしまいます。細身のオードリーが大きなチェロケースを運ぶところはちょっと痛々しいかな‥でもこのチェロケースが大切な小道具(大道具?)になるのですね。プレイボーイ役のゲーリー・クーパーは今回初めて見ましたが、なかなか渋い二枚目俳優さんですね(今回はコミカルな役ですが)アリアーヌの今までの恋の遍歴の録音を聞いて悔しがり、ワインのワゴンを行き来させるシーンは楽しくて大好きです。机の下にアリアーヌが入って、横でフラナガンが電話をしながら横たわってるシーンはお洒落で絵になってますね〜。お抱え楽団はサウナやピクニック、駅のプラットホームにまでついてくるのですね(笑)娘の恋の相手がプレイボーイのフラナガンと知った時の心情をモーリスさんがとても上手く演じていますしラスト、プラットホームでチェロのケースを残して行ってしまった娘の幸せを願う父親の表情は心に残ります。全編を流れる“魅惑のワルツ”の甘い調べが素敵です。


過去のない男 MIES VAILLA MENNEISYYTTA
監督アキ・カウリスマキ 出演マルッキィ・ペルトラ カティ・オウティネン アンニッキ・タハティ
希望があればどんな環境の中でも生きられる‥過去のしがらみを捨てる勇気を持つ大切さを教えてくれるしみじみとした感動作です。暴漢に襲われて記憶を失って、トレーナーの家族に助けられるまでが(実際は大変なことなのに)淡々とユーモラスに描かれているのは、カウリスマキ監督の独特な語り口なんですね。トレーナーの人達が協力し合って生活している様子や過去のない男が子供たちとトランプ遊びに興じてる姿を見ていると、人の情けは信じても良いのだと思わされます。そして“友を見つけたこの喜び‥”の歌の歌詞がとても良いですね。友は私の罪を洗い流してくれ、恵みをもたらし、心に安らぎを与えてくれる‥友とは神のことなんですね〜きっと。人生は後ろには進まない、前進あるのみだと‥イルマとの出会いが彼の心の支えになって洋服もおしゃれになって華やいでいくところが楽しいです。彼は音楽プロデューサーの才能を持っているのでコンサートの企画などもやって、人生に生きがいを見出してゆくのですね。“俗世のむなしさ、人の心は小さなもの、喜び悲しみ、燃える感情も全て小さな心で起こる”どんな時にも音楽は生きる希望を与えてくれる‥神と美しい芸術は人の心を救ってくれる‥ じゃがいもを畑に植えると雨が降って収穫の時、病気の人に半分分けてあげるシーンも説得力がありますね。銀行強盗の件で自分の身元が分かった男は自分に妻がいてすでに別の男性がいても、あわてず騒がずというところが呆れるやら可笑しいやら‥(笑)再びモンレボ公園に戻ると同じ強盗に出会った彼を町の人々が一丸となって救ってくれたのを見て、イルマとこの町にとどまる決心をするラストははしみじみと余韻が残ります。


コールド・マウンテン COLD MOUNTAIN
監督アンソニー・ミンゲラ 出演ジュード・ロウ ニコール・キッドマン レニー・ゼルウィガー  フィリップ・シーモア・ホフマン ナタリー・ポートマン
美しいコールド・マウンテンに牧師の父と一緒に赴任してきたエルダ(ニコール)とこの村に住むインマン(ジュード)の悲劇のラブストーリーです。たった一度の口づけを胸に秘めて、南北戦争に行ってしまったインマンがエルダに会いたい一心で脱走を企て、何度も強運に恵まれてコールド・マウンテンに戻るまでの苦難の旅を見ていると戦争の恐ろしさをひしひしと感じます。エルダが父(サザーランド)亡き後、自活しなくてはいけなくなり、大好きなピアノも売ったりして、優雅に育てられた彼女には大きな試練だったと思います。彼女を助けるためにやって来たルビー(レニー)の逞しさはこういう時世では貴重かもしれませんね。ふたりの友情が深まっていくところはとても気持ちが良かったです。レニーちゃんはいろんなタイプの役柄ができる良い女優さんになりましたね。ちょっと危ない牧師役のシーモアはとても存在感があります。若き未亡人役のポートマンは(ネットの方たちも絶賛されていますが)心に残る迫真の演技ですばらしかったですね。インマンの生を脅かす義勇軍の存在はとても怖いと思いました。エルダが井戸の中で見た光景とラストのシーンが重なるところは悲しいけれど美しくて大好きです。ニコールとジュードのクールな美しさも戦争の悲惨さを象徴してるようで印象的でした。「風と共に去りぬ」のビビアン・リーとクラーク・ゲーブルとはちょっと趣きが違いますけれど‥戦争が終わって平和に暮らしているエルダやルビーたち見ていると、戦争は絶対にあってはならないものと強く実感しました。


ビッグ フィッシュ BIG FISH
監督
ティム・バートン 出演ユアン・マクレガー アルバート・フィニー ビリー・クラダップ ジェシカ・ラング ヘレナ・ボナム・カーター ダニー・デビート 

父親が語るお伽噺を聞いて育ったウィルと死期の迫った父親との愛の物語です。父エドワード(アルバート)の重病の知らせで出産真近の妻ジェセフィーヌと共に両親のアラバマの家に戻ったウィル(ビリー)が父を見舞いながら様々なお伽噺を回想するシーンが素晴らしいです。未来を予見する魔女や、一緒に旅した巨人、怖い森の奥にある美しい町、妻と知り合ったサーカス団など全編美しいストーリーで綴られます。アラバマ一怖い魔女(ヘレナのメーキャップがすごい!‥「PLANET OF THE APES」の時は可愛かったですけど)は謎めいた人物設定ですね。人生の節目の折に触れ聞かされた物語は、ほとんどがホラ話だと思って父を敬遠していたウィルが、エドワードの電報を見つけることによって、ホラの中にも少しの真実が隠されていたことに気づき、父親の愛情を確認するラストは感動的です。小さな池の大きな魚にはなりたくない‥解釈はなかなか難しいですね。ユアンはこの役ははまり役と言っていいほど笑顔が素敵です(ムーラン・ルージュも素敵でした!)親の死に直面した時、子供は親の人生を走馬灯のように思い巡らせて、親と自分の関わり方や今までの親子の葛藤などを思い出して尊敬できる部分と反面教師の部分を誰もが感じるのではないでしょうか。100%否定されると親も立つ瀬がないけれど50%でも尊敬されたら良しとしなければならないと思います(笑)ダニー・デビードは「カッコーの巣の上で」「L・A・コンフィデンシャル」の時もすばらしくて才能豊かな俳優さんですね。ヘレナは「眺めのいい部屋」の時から好きな女優さんです。おふたりのお子様ならきっと将来は監督か俳優として活躍されるのではないでしょうか?(笑)


知りすぎていた男 THE MAN WHO KNEW TOO MUCH
監督アルフレッド・ ヒッチコック 出演ジェームズ・スチュアート ドリス・デイ クリストファー・オルセン ダニエル・ジェラン
劇中歌『ケ・セラ・セラ』のすばらしさはもちろん、明るくてキュートで素敵なお母さんを演じるドリス・デイがとても魅力的です。「知りすぎていた男」は1934年に作られた「暗殺者の家」のリメイクなんですね。“このシンバルの一打が平凡なアメリカ人の生活を揺す振った”と暗示されるオープニングのオーケストラパーカッションがすばらしいです。途中音楽が使われていないのはラストのこの音楽を引き立てるためだそうですね。モロッコ旅行のバスの中で知り合ったフランス人男性ベルナール(ダニエル)が目前で○され、“ある政治家が‥アンブローズ・チャペル”と言い残して絶命するところから、平和なアメリカ人一家が恐ろしい事件に巻き込まれることになります。レストランで顔見知りになった夫妻(何やら怪しげ)に息子(ハンク)が誘拐されたことを知らせる前に医師であるマッケナ(ジェームズ)は妻ジョー(ドリス)に鎮静剤を飲ませて話すシーンはドリスの驚きと悲しみの表現が(ちょっと色っぽくて)すばらしいですね。アンブローズ・チャペルを頼りに、自分たちだけで息子を捜す二人の涙ぐましい努力でハンクが教会に監禁されていることをかぎつけ、ラストのアルバートホールでのシンバルの一打までの緊迫感あふれるシーンは何度観ても引き込まれます。ドリス・デイの歌う『ケ・セラ・セラ』にハンクが口笛で応え、夫妻のもとに彼が戻って来ますが、サスペンスと言ってもほのぼのとしたハッピー・エンドがさわやかでとても気持ちの良いラストです。ユーモアのセンスもヒッチコックならではの可笑しさがあります。私がまだ小さな女の子だった時‥と歌われる『ケ・セラ・セラ』は素敵な歌詞と共にいつまでも心に残る名曲ですね。


真珠の耳飾りの少女 GARL WITH A PEARL EARRING
監督ピーター・ウェーバー 出演スカーレット・ヨハンソン コリン・ファース トム・ウィルキンソン キリアン・マーフィー
画家フェルメールが描いた一枚の少女の肖像画の秘密に迫る絵画のように美しい作品です。父の病気のために17歳のグリート(ヨハンソン)は画家フェルメール(コリン)の家に雇われますが、彼の妻カタリーナは6人の子沢山で妻や子供たちのいじめや嫉妬を受けることになります。若くて美しいグリートが美的センスが高いことに気づいたフェルメールは彼女にモデルになるように頼み創作する中で、お互いに相手を意識するようになります。グリードの窓を拭いている姿、洗濯物を干している姿、アトリエで絵の具を練っている姿、どれもがまるで一枚の絵画のように美しいのです。グリートが窓の埃をふくことで、部屋の光と色彩感覚が変わりフェルメールのインスピレーションが沸いてきます。そしてこの美しい一枚の絵が描かれます。彼は大家族の家計を助けるために、この仕事を引き受けますが、優れた芸術作品もそういう切羽詰った中での仕事から誕生するものなんですね。やがてふたりの関係(プラトニック・ラブ)を知った妻の怒りに触れ、グリートは家を出て行くことになります。ヨハンソンの表情を抑えた演技が不思議な魅力を醸し出していて作品全体の格調を高めていると思います。特にフェルメールに耳飾りのための穴を耳たぶに開けられるシーンは静かな中にも痛みに耐える表情が官能的で素晴らしいです。コリンも画家という難しいキャラクターを渋いけれど決して重々しくなく素敵に演じています。「真珠の耳飾りの少女」は通称「青いターバンの少女」と呼ばれています。


野ばら DER SCHO NSTE TAG MEINES LEBENS
監督マックス・ノイフェルト 出演ミヒャエル・アンデ パウル・ヘルビガー エリノア・イェンセン
オーストリアに亡命してきた少年の愛情物語と全編を流れるウィーン少年合唱団の美しい歌声が素晴らしいです。両親のいないトーニ(ミヒャエル)はオーストリアに亡命してきますが、その村に住む優しいブリュメルおじさんと一緒に住むことになります。しばらくして彼が美声で歌がとても上手なことに気づき、ウィーン少年合唱団に入団させる決心をします。入団するまでの学校でのやりとりがとても楽しくて、校長先生の穏やかでステキな紳士ぶりに惚れ惚れしてしまいます。テストで歌うトーニの「野ばら」はまさに天使の歌声ですね。才能を認められ入団を許可されたトーニに校長先生は歌うこと以外に誠実、協力、努力の大切さを教えます。寄宿舎に入るとブリュメルおじさんがまたひとりになると言って泣くトーニがとてもいじらしくて‥団員の世話をするマリアを母のように慕うトーニは、ある日ハイキングの途中に見つけた花を彼女の部屋に飾りに行って、泥棒の濡れ衣を着せられ退団を命じられます。結局お金は出て来ますが、部屋を飛び出して川に落ちて重体になったトーニをマリアは徹夜で看病します。アヴェ・マリアが流れる中で祈る姿は聖母マリアそのものでため息が出るほど美しいです。目覚めたトーニはマリアのことをママ‥と呼びます。愛する人たちに見送られて、トーニと団員たちはアメリカ演奏旅行に出かけることになるのです。ウィーンの街並も人々の心も音楽も全てが美しくて、何度観ても心洗われる大好きな作品です。