運命じゃない人

2005/日
監督/内田けんじ
出演/中村靖日 霧島れいか 山中聡
    山下規介 板谷由夏

★★★★★

知的で心暖まるラブ・コンゲーム
婚約解消で指輪を質に入れ、ひとり淋しくレストランにいる桑田真紀(霧島れいか)。向かいのテーブルにはサラリーマン宮田武(中村靖日)と親友で私立探偵の神田勇介(山中聡)が食事をしています。突然神田に声を掛けられた真紀はためらわず彼らのテーブルに‥。しばらくして神田がレストランからいなくなります。その晩から翌朝までに宮田のマンションに起こる数奇な事件の行方は?


見終わった後、楽しくて可笑しくてとてもハッピーになれました。何でもない日常のシーンから始まってそのシーンが後でどんな風に展開されるのかどんどん引き込まれましたね。とても人の良い宮田さん、先輩からの頼みを断れないのはまるでジャック・レモンのようですね。そんなほのぼのとしたシーンの後はもう意外や意外のシーンの連続で、同じ時間の出来事をそれぞれの視点から見るとこうなるというのがとても面白かったです。やくざとお金がからんでくるとサスペンスとしても楽しめますが、語り口がユーモラスなので粋で楽しい作品に仕上がっていますね。それぞれのキャラクターも味があって自分なら誰に一番近いかなんて考える楽しさもありますよね。あゆみ(板谷有夏)のキャラはもしかしたら誰もが少しは持ってるかもしれないし、やくざの親分浅井(山下規介)のようなキャラだってもしかしたらあるかもしれないです(笑)

でもやっぱり聖人のように清らかな宮田さんは素敵!真紀さんの電話番号を聞かなきゃと車を追いかけ走る走るあの一途な気持ちは尊いですね。あの純情さが最後の奇跡を呼ぶのですから。電話が繋がらなかった時、神田に騙されたんだと言われても、‘あの人は絶対そんなことするような人じゃない’と信じて疑わないのですね。この映画は宮田さんの愛の勝利があるからコンゲームなのに暖かいラブ・ストーリーになっています。そして仕事ではちょっと俗っぽい神田さんも宮田さんのことを話す時は優しい表情になるのは彼のことがほんとうに好きなんですね。札束の上と下だけが本物だったり、神田さんが電話したのはお手洗いの中だったり、実は真紀さんはお金を取っていた等など‥思い出すと笑ってしまうシーンばかりです。でもテーマは真摯で人は何のために生きるのかと言う問いかけに答えてくれます。タイトルもなかなか粋ですね!


恋する神父

A STRANGER DF MINE

LOVE,So Divine
2004/韓
監督/ホ・インム
出演/クォン・サンウ ハ・ジウォン
    キム・イングォン キム・インムン

★★★

真面目な神学生が恋に落ちた!
神父として生涯神に仕えることを誓った真面目なカトリックの神学生ギュシク(クォン・サンウ)。そんな彼が教会での失敗を理由に親友のソンダルと共に山の上の小さな教会で精神修業を命じられます。そこで知り合ったのが自由奔放な娘ボンヒ(ハ・ジウォン)でした。ふたりはちょっとしたハプニングでキスをしてしまいその日からギュシクの苦行が始まります。


クォン・サンウの神父姿に興味津々で観ました(笑)教会は馴染みのある場所なので聖らかな雰囲気は抵抗なく楽しめました。神父が恋をするということは現実には大変なことですが、ラブコメなのでギュシクの心の葛藤はそんなに深刻には描かれてなく、全編明るいタッチで爽やかです。活発なボンヒに振り回されたり、トラのぬいぐるみを着たりで真面目だけれどお茶目で可愛いギュシクがとてもチャーミング。親友の神学生ソンダルは遊び人タイプですが、現実に二人のような神父様がいたらきっと楽しいだろうな‥。並ではない破天荒なボンヒの更正と洗礼を受けさせる役目を担ったギュシク。初めは彼女の素行の悪さに困っていても、少しずつ彼女の優しい面を知るようになって恋心が芽生えます。いったん好きになるとその恋を諦めるのは容易ではないのですね。

ついに聖職授任式の日、親友のソンダルは迷うことなく神への愛と生涯独身を誓ったのに、ギュシクは‘デオ・グラシアス’の一言が答えられないのです。じっと沈黙の後に涙を流すギュシクを見ていると私もやはり涙が出てしまいました。神への愛か、彼女への想いか‥?これは大変な決断を要することだと思います。韓国は儒教の国と言われるけれど、国民の半数が信仰を持ち、その半数が仏教で半数がキリスト教です。若者の信仰心がとても高く、ソウルの地下鉄では聖書の一節を暗記している若い人たちをよく見かけるそうです。学校や家庭とは違うもうひとつの共同体を作っているのですね。この映画が生まれる下地が韓国にはあるのだな〜と痛感しました。


ハービー 機械じかけのキューピット

HERBIE;FULLY LOADED
2005/米
監督/アンjジェラ・ロビンソン
出演/リンジー・ローハン マット・ディロン
    マイケル・キートン ジャスティン・ロング

★★★★

愛する人に幸せを運ぶハービーの冒険
レーサーになる夢を諦め、就職も決まったマギー・ベイトン(リンジー・ローハン)は大学卒業祝いに父親レイ(マイケル・キートン)からスクラップ寸前のフォルクス・ワーゲンをプレゼントされます。マギーが運転席に座ると1通の手紙が‥。「あなたとハービーがひとつになれば奇跡が起こる」と書かれています。恐る々エンジンをかけると、突然彼女の意思と関係なくクルマが動き始め、マギーとハービーの冒険が始まります。


ディズニーの映画は動物を擬人化しているお話が多く、彼らの可愛いキャラクターが大好きなので子供の頃からよく観ています。今回の‘ハービー’はクルマで男の子。まるで人間のような心を持っていて腕白、いたずら好き、やきもち焼きと困った性格です。趣味はスケボーと恋愛です(笑)いろんなパワーを持っていて、イヤな人にはガソリンやオイルを吹きかけ、いじめっ子には強烈なパンチをプレゼント、華麗なスーパー・ミラクル・トリックを披露してくれます。でも相棒がいないと力を発揮できないところがいじらしいですね。母を亡くして父と兄三人で暮らしているマギーにケヴィン(ジャスティン・ロング)との出会いを作ってくれるハービーはまさにキューピット。大好きな人を幸せにする特別な力を持っている奇跡のクルマです。

ハービーのモデルになっているのはフォルクスワーゲンで日本でもビートルやカブトムシと呼ばれている人気の高い車ですね。車は全然詳しくない私でも良く知っている車種です。マギーとマーフィ(マット・ディロン)のカーレースは手に汗握るシーンの連続でしたね。レースの途中で何度もタイヤを取り替えるところはびっくりしましたし、お互いにけん制し合うところはまるで「ベン・ハー」の戦車レースを観てるよう。CGを使っているのでそんな〜と思うようなシーンもありましたが楽しかったですよ。天気によってエンジンの調子が変わったり、愛情を注いだ分はちゃんと答えてくれるのは車も人も同じなんですね。どんなにおんぼろになってもエンジンはピカ1。もう少ししっとりと泣かせてくれるシーンがあれば良かったですが、世界中の誰からも愛される愛のキューピット、ハービーがとても可愛かったです。






ルル・オン・ザ・ブリッジ

Lulu on the Bridge
1998/米
監督/ポール・オースター
出演/ハーヴェイ・カイテル ミラ・ソルビーノ
   ウィレム・デフォー ヴァネッサ・レッドグレイブ

大都会の不思議で切ないラブ・ストーリー
NYに住むサックス奏者イジー(ハーヴェイ・カイテル)は演奏中に撃たれ重症を負うが、一命を取りとめます。人生に絶望した彼も友人たちの励ましでどうにか人生の再出発を願っています。そんな時に偶然光る青い石を手に入れ、それがきっかけで出会ったのが女優の卵、セリア(ミラ・ソルヴィーノ)です。年の差があっても熱烈に愛し合うふたり‥。セリアがルルの役を得た後、イジーが行方不明になりセリアは必死で彼の消息を追います。


今回の再見で初鑑賞では良く分からないところも少し理解できましたし、うやむやに思えたラストも深い意味が感じられてとても良かったです。ドラマチックなストーリーよりも一つ一つのせりふが味わい深くて印象的ですね。やはり大好きな「スモーク」の作家ポール・オースターの脚本だからでしょうか。イジーが撃たれて音楽家としての道が閉ざされた時、‘音楽が命だったから、生き甲斐はなくなった’と絶望している彼に‘命が無事ならまた別の人生が開ける。人生を素晴らしくするのも、つまらなくするのも自分次第’と励ましてくれるセリアと友人たちが素敵。そして青い光を放つ不思議な石はドラマをミステリアスなものにしてくれます。まるで人生は幻想のようなもの‥とでも言ってるようです。冒頭のシーンのセリアのスナップ写真も何か暗示的です。

ミラ・ソルヴィーノがとてもチャーミング。ベッドの中でイジーに‘あなたは海、それとも川?あなたはスニーカー、それともブーツ?’と真剣に尋ねるシーンは可愛いです。イジーは思わず‘君は僕の天使、命だ’と言ってしまう気持ち、良く分かりますよ。ハーヴェイ・カイテルは「スモーク」の時も味のある俳優さんと思いましたが今回もそうですね。セリアの出演シーンをビデオで見るシーンは二人共とても自然体でいいですね。謎のヴァン・ホーン博士(ウィレム・デフォー)も素晴らしくて、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」を口ずさむシーンは上手でもっと観たかったです!でもこの倉庫のような部屋のシーンは今もって謎ですね。ルルとはパラマウントの人気女優ルイーズ・ブルックスですが、セリアが石を投げ捨て、身投げをしたのがダブリン川なのでタイトルの意味も少し理解できるように思います。観る者に解釈を委ねる、哀切を感じる都会のラブ・ストーリーですね。

★★★