キングコング

KING KONG 2005/米
監督/ピーター・ジャクソン
出演/ナオミ・ワッツ ジャック・ブラック
    エイドリアン・ブロディ
    トーマス・クレッチマン
☆☆☆☆☆

CGで蘇るキングコング
1933年のNYは仕事や食糧難の時代。そんな恐慌時代に女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)も映画や舞台の仕事を探していた。映画監督のカール・デナム(ジャック・ブラック)は有史以前の島スカル・アイランドを舞台に撮影を企画していた時、レストランでアンに出会う。出演依頼をしても了承しないアンは脚本家はジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)と聞くやいなや、すぐに出演を決める。一行はヴェンチャー号に乗り込むことに‥。

「キングコング」と言えばどうしても前2作と比較してしまいますが、今作は時代を反映してダイナミックなCGの映像に圧倒された3時間でした。前半は一行がどのようないきさつでスカルアイランドに行くことになったのか丁寧に描かれていて見応えがありましたね。CGで作られたマンハッタンやブルックリンの建物も当時の雰囲気が良く出ていたと思います。(うとうとして記憶が確かではないですが)デナムが町でアンを見かけて説得するシーンなどは特に印象に残っています。アンがかぶっていた帽子はフェイ・レイ(オリジナルのアン)がかぶっていたものだそうですよ。航海のシーンはまるで「タイタニック」を観てるよう‥。そしてキングコングが地響きのする足音と共に巨大な姿を現すシーンはわくわくさせられますが、今回はCGの映像なのに恐さが少なかったのが意外でした。でも戦いの場面は迫力があって前作以上に恐かったですね。恐竜や、さそり、クモなど珍しい昆虫の攻撃などはジェラシックパークやインディー・ジョーンズを思わせます。

そんな戦いの中で、最も美しいシーンがアンとコングが愛情を交わすシーンです。2作目では滝に飛び込んだアンの体にコングが息を吹きかけて乾かすシーンが微笑ましくて大好きなんですが、今回はダンスや宙返り、お手玉をしてコングを大喜びさせて名場面になってますね。コミカルな身のこなしや表情をナオミ・ワッツが見事に演じて素晴らしかったです。コングの表情もリアルですね〜。アンディー・サーキスの演技が光ってます☆島でもエンパイア・ステートビルでもけっしてアンを離さず、片手で戦うコングの姿に感動しました。コングの純粋な愛情に泣けましたね。アンが夕焼けを見て美しいと言うシーンもとても綺麗‥。ジャック・ブラックの撮影してる姿やエイドリアン・ブロディの活躍も印象に残りましたが、コングの前では影が薄かったように思います(笑)監督は少年の頃に観た「キング・コング」に感動してこの作品を作ったそうですが、情熱があれば夢は必ず叶うのですね。
                                     (2005.12.17)
                                                  
                                

THE有頂天ホテル

HOTEL AVANTI  2006/日
監督/三谷幸喜
出演/役所広司 松たか子 佐藤浩市
    香取慎吾 篠原涼子 戸田恵子
☆☆☆☆

カウントダウン in HOTEL AVANTI
大晦日のホテルアバンティは新年へ向けてのカウントダウンパーティーを控え点検や準備におおわらわ。その最中にも大勢の宿泊客が出入りをしている。マスコミから逃げている国会議員やマン・オブ・ザ・イヤーを受賞した教師夫妻、芸能人、演歌歌手たち。みんな様々な事情を抱えながら‥。そんなホテル内での人間模様がコメディータッチで描かれる三谷ワールド・エンターテイメント!

ホテルが舞台になっているので登場人物が多いのは当然ですが、従業員だけでも10人はいます。総支配人(伊藤四郎) 副支配人新堂平吉(役所公司) アシスタント・マネージャー矢部登紀子(戸田恵子) ベルボーイ只野憲ニ(香取慎吾) 客室係竹本ハナ(松たか子)たち。宿泊客は教師夫妻の堀田衛夫妻(門野卓造、原田美枝子) 演歌歌手徳川善武(西田敏行) 国会議員武藤田勝利(佐藤浩市) 芸能プロ社長赤丸寿一(唐沢寿明) あひるのダブダブたち14人と1匹。これだけたくさんのキャラクターがみんな丁寧に描かれて、それぞれ輝いているところはさすが三谷ワールドですね。従業員たちと宿泊客たちの人生がどこかでクロスしているのがいいですね。コメディーなのでどのシーンも笑えて楽しいのですが、その中に大切なせりふがちりばめられているところも、三谷ワールドの魅力でしょうか。印象に残ったせりふは原田さんの‘自分の仕事に誇りを持って欲しい’と西田さんの‘人生は神のみぞ知る’です。含蓄がありますね。

キャラクターとしては歌手になる夢を捨て切れない只野くんに一番感情移入できました。プロになるには大勢の中で何か抜きん出ないとだめと言う徳川の言葉は厳しいけれど真実なので説得力があります。彼自身も悩みが多くて可哀相‥。いつもは超二枚目の唐沢寿明、オダギリジョーはかつらをかぶっての熱演だし、謎のフライトアテンダント小原なおみ(麻生久美子)の変身ぶりに驚かされ‥と書き出すときりがないです。誰もが生きることに一生懸命。自分に与えられた人生を精一杯生きている人たちにエールを送りたいです。オール・スターキャストで華やかですが、渋い副支配人を演じた役所広司とコールガールを味わい深く素敵に演じた篠原涼子がとても魅力的でした。ホテルのリッチなグランド・スイートルームは1932年に作られた米映画「グランド・ホテル」の出演スター バリモア クロフォード ライオネル ガルボ4人の名前がつけられているそうです。粋ですね。
                                      (2006 .1.18)

プライドと偏見

PRIDE&PREJUDICE  2005/英
監督/ジョー・ライト
出演/キーラ・ナイトレイ マシュー・マクファディン
    ロザムンド・パイク タルラ・ライリー
    ドナルド・サザーランド ブレンダ・ブレッシン
☆☆☆☆ 

    

時代を超えて伝わる恋愛・結婚観
イギリスの田舎町に住むベネット家は父親(ドナルド・サザーランド)母親(ブレンダ・ブレッシン)長女ジェーン(ロザムンド・パイク)次女エリザベス(キーラ・ナイトレイ)三女メアリー(タルラ・ライリー)四女キティ(キャリー・マリガン)五女リディア(ジェナ・マローン)の七人家族。両親は娘たちを資産家と結婚させようと躍起になっている。ある日隣家にお金持ちの独身男性ビングリー(サイモン・ウッズ)が越してきて、ベネット家は早速舞踏会に招待される。その夜エリザベスはビングリーの親友マーク・ダーシー(マシュー・マクファディン)と出会うことに‥。

原作は古典の名作として世界中の人々に愛されている英国女流作家ジェーン・オースティンの「プライドと偏見」です。映画「いつか晴れた日に」は同じオースティンの「分別と多感」の映画化です。18世紀末頃は女性に財産相続権がなく、結婚が女性にとっては全ての時代。母親は娘たちの結婚相手を見つけることが使命と思う気持ちは、現代も同じでどこの国でも年頃の娘を持った母親なら理解できるのではと思います。当時はパーティーがお見合いの場で、男女とも品格や教養が要求されます。慎み深いジェーンはビングリーのめがねに叶っても、才気溢れるエリザベスをマークはすぐには受け入れられなくて、エリザベスも彼の高慢な態度が嫌で仕方がない‥それでも別れられないのはお互いにどこか強く引かれるところがあるからでしょう。エリザベスはマークを誤解して偏見を持っていたからいつも冷たくあたり‥と二人の恋は観ていてスリルがありました。

人との出会いは第一印象がとても大切ですが、最初は好意が持てなくても誠実さや暖かい人柄にふれて印象が変わるのはよくあること‥マークはそういう男性の典型かもしれません。偏見というものは容易には消えないものだけれど、彼の真実の姿を知って、理想の結婚相手となるハッピーエンドが多くの人の心を捉えているのではないでしょうか。女性が自立できる現代にも通じる真実の恋に憧れますね。キーラ・ナイトレイの輝きが印象的でしたが、マシュー・マクファディンの繊細な包容力、ドナルド・サザーランド、ブレンダ・ブレッシン、ジュディ・デンチの風格も忘れ難いです。絵画のような田園風景やお屋敷の調度品も素晴らしいですね。せりふ中心でラブシーンもほとんどないのは、韓国ドラマの「冬のソナタ」に通じるところもあって老若男女安心して観ることができると思います。私は「ブリジット・ジョーンズの日記」のファンになってにコリン・ファースの「高慢と偏見」を観ました。どちらのマーク・ダーシーも素敵です。                      
                                       (2006.2.1)

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

walk the line  2005/米
監督/ジェームズ・マンゴールド
出演/ホアキン・フェニックス リーズ・ウィザスプーン
  
  ジニファー・グッドウィン ロバート・パトリック
☆☆☆☆

伝説のミュージシャン、ジョニー・キャッシュのトゥルー・ラブ・ストーリー
1944年のアメリカ、アーカンソー州に住む12歳のジョニーは両親と兄とつましく生計を立てていた。ジョニーはラジオから流れてくるゴスペルやカントリーを聴くのが楽しみで、カントリー音楽一家の次女、ジューン・カーター(リーズ・ウィザスプーン)の歌声がとりわけ気に入っていた。しかし酒に溺れる父や最愛の兄の死は彼の心に暗い影を落としていた。1952年、空軍に入隊したジョニー(ホアキン・フェニックス)は初恋の女性ヴィヴィアン(ジニファー・グッドウィン)と結婚をして、やっとの思いでプロのミュージシャンになり、ジューンと運命の出会いをすることに‥。

音楽はどんなジャンルでも好きですが、アメリカのカントリーミュージックは詳しくないので、ジョニー・キャッシュの名前もこの映画で初めて知りました。カントリーは陽気で軽快で保守的なのに、ジョニーは独自の歌声でロック以上に革新的で内省的な音楽を奏でます。歌い方も歌詞も過激なので一歩引いてしまう感じなのですが‥。でも子供の頃は牧師をめざしていた兄の影響でゴスペルシンガーになりたかったそうです。人生の様々な経験を経て、彼はきっと人間の持つ邪と聖の部分を体験して、それを自分の言葉として音楽で表現したかったのではないでしょうか。だからある意味、ソウルミュージックと言えるのかもしれませんね。人生に行き詰まった時に刑務所で受刑者たちとの魂の触れ合うコンサートで見事にカムバックを果たしていますが、このシーンがドラマのクライマックスになっていてとても感動しました。音楽は聴く者に勇気や希望をを与えることができた時、より価値あるものとして輝くと思います。

ヴィヴィアンと離婚をして、少年の頃から憧れていたジューン・カーターに真実の愛を求めたジョニーは40回ものプロポーズをします。OKの返事をもらったのはなんとコンサートのステージの聴衆の前でした。それまでに10年間お互いに支えながら生きてきた友情が愛情に変わってゆくところは、音楽以上に素敵で見応えがありました。音楽を愛する者、不器用な者同志の純粋さが二人の愛を美しいものにしていました。まさに音楽で結ばれた二人だったのですね。吹替えなしの二人の歌が素晴らしかったです。ホアキン・フェニックスの体当たりの演奏はまるでジョニーの魂が乗り移ってるようでした。兄のリヴァーも「愛と呼ばれるもの」でカントリー・シンガーを見事に演じていましたが、どちらも大好きな俳優さんです。リーズの歌は(ジューン本人の歌は知らないですが)プロ級に上手です。そして離婚経験者の苦しみ、ジョニーとの愛を育む切ない女心を内面から演じて素晴らしかったです。ジューンが亡くなって3ヶ月後に後を追うようにジョニーは亡くなっていますが、二人の愛情の深さを物語っているようです。
                                        (2006.3.1)