ナルニア国物語 第1章ライオンと魔女

THE CHRONICLES OF NARUNIA THE LION
THE WITCHAND THE WARDROBE/2005・米
監督/アンドリュー・アダムソン
出演/ジョージ・ヘンリー スキャンダー・ケインズ
    ウィリアム・モーズリー アナ・ポップウェル
    ティルダ・スウィントン ジャームズ・マカヴォイ
☆☆☆☆☆

扉の向こうのナルニア王国 序章
第2次世界大戦下のロンドン、ペベンシー一家の4人兄妹は田舎に疎開することになった。長男ピーター(ウィリアム・モーズリー)長女スーザン(アナ・ポップウェル)次男エドマンド(スキャンダー・ケインズ)次女ルーシー(ジョージ・ヘンリー)は母親と別れて疎開先へと旅立つ。お屋敷ではカーク教授と世話役のマクレディさんが彼らを迎えてくれる。ある日4人でかくれんぼをしている時、ルーシーは大きな衣装だんすを見つけ、中に入るとその奥には真白い神秘の森の銀世界が広がっていた。

ディズニーの作品らしく美しいファンタジー映画ですが、ストーリーは聖書からの引用が多く興味深く観ることができました。私にしては珍しくC.S.ルイスの原作を映画鑑賞の後で読みました。映画は原作にかなり忠実に作られています。ルーシーがナルニア国に足を踏み入れた瞬間、現実から離れ寓話の世界が広がっていくところは年齢を問わずわくわくさせられます。聖書は全然詳しくないですが、アスランは神で魔女は冷酷な支配者で、4人が彼らと出会っていろいろなことを学んでいく過程が楽しいですね。ルーシーと出会ったタムナスさんは、魔女からアダムの息子とイブの娘をを引き渡すように命じられていたのに、ルーシーをそっと衣装だんすに戻してあげる‥後にタムナスさんが石像にされた時、ルーシーは彼をアスランの力で生き返らせてあげるところはふたりの強い友情を感じますね。ビーバー夫妻の温かい人柄(ビーバー柄?)も印象深いです。

魔女にターキッシュ・デライト(原作ではプリン)で誘惑され、負けそうになったエドマンドの弱さも心に残ります。好奇心旺盛なルーシーの勇気も忘れがたいです。4人がナルニアに来たことで春がおとづれてサンタが現れ、銀の剣と盾、弓矢と角笛、万能薬を授けられるシーンは神さまの全知全能と人間に与えられた英知を示しているように思います。アスランが魔女に殺されて生き返ったのは、十字架にかけられたキリストが復活することろではないでしょうか。石像にされた者たちがアスランの息で元の姿に戻るのは、キリストが起こした数々の奇跡ですね。最後の戦いは聖と邪の戦いで本当にすさまじいですが、この戦いは人間の善と悪との戦いでもありますね。アスランの威厳と風格に圧倒されます。ナルニア国は時空を超えたお話、ヤギ足のフォーンたち、半人半漁のセントールたち、木や水の精と不思議な世界で想像力をかきたてられます。友情、兄妹愛、悪の誘惑、聖邪の戦い、神との出会いなど興味が尽きません。第2章が楽しみです。


2006.5.24

2006.3.15

プロデューサーズ

The Producers/2005・米
監督/スーザン・ストローマン
出演/ネイサン・レイン マシュー・ブロデリック
    ユマ・サーマン ウィル・フェレル
    ゲイリー・ビーチ ロジャー・バート
☆☆☆☆

華やかブロードウェイ・ミュージカル
1959年のニューヨーク。かつてブロードウェイで華々しく活躍していた大物プロデューサー、マックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)のもとに会計士レオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)が帳簿を調べにやってくる。そんな彼にマックスはショウがコケるとプロデューサーが儲かるというからくりを教える。小心者のレオは断るが、プロデューサーの夢を捨て切れずマックスとコンビを組むことに。やっとの思いで開幕にこぎつけるが、意外にもショウは大成功してしまう。

トニー賞12部門の他にはほとんど前知識もなく観ました。冒頭のマックスとレオの出会いのシーンからストーリーも演出も凝っていますね。史上最低のミュージカルを作るために脚本家、演出家、出演者を探すふたりの奮闘ぶりが楽しく描かれています。華やかなミュージカル・コメディーはフレッド・アステアの往年のミュージカルを彷彿とさせてくれます。レオが会計事務所に戻ってから歌われる「I wanna be a produser」のナンバーも、オフィス内でマックスとレオの掛け合いで歌われる「We can do it」も印象的なナンバーですね。冒頭の「Opening night」はとても華やかですが、セントラルパークで歩行器を使っての壮大なダンスシーンは笑えます。舞台が成功したのはヒトラーを揶揄したからでしょうが、いかにも米国らしいですね。

ネイサンとマシューは舞台でも共演しているので息もぴったりの名コンビですね。スウェーデン娘のウーラ(ユマ・サーマン)が美しいドレスと見事なプロポーションで歌って踊るナンバーも素敵。レオとウーラのダンスも魅せてくれます。そして脚本家のフランツ・リフキン(ウィル・フェレル)の芸達者ぶりには驚きました。演出家のロジャー・デ・ブリー(ゲイリー・ビーチ)の貫禄、ロジャーのアシスタントのカルメン・ギア(ロジャー・バート)の熱演も印象深いです。彼が「デスパレートな妻たち」の薬剤師さんとはびっくり!コメディーでも最後はマックスとレオの友情が美しく描かれているところがやはり人気の秘密ではないでしょうか。プロデューサーズと複数になっている意味がよく分かりました。68年作のメル・ブルックス監督作や舞台版「プロデューサーズ」も観てみたいですね。

2006.4.7

ブロークバック・マウンテン

BROKEBACK MOUNTAIN/2005・米
監督/アン・リー
出演/ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
    ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ
☆☆☆☆☆

真実の愛は永遠に‥
1963年アメリカ、ワイオミング州、ブロークバック・マウンテンの農牧の季節労働者として雇われたイニス・デルマー(ヒース・レジャー)とジャック・ツィスト(ジェイク・ギレンホール)。大自然の中、二人で仕事をするうちに友情を越えた関係に発展する。やがてキャンプが終わり、二人は別れ、それぞれイニスはイルマ(ミシェル・ウィリアムズ)とジャックはラリーン(アン・ハサウェイ)と結婚をして子供もできる。4年後再会した二人は再び燃え上がる情熱を抑えることができなかった。

観たのは少し前ですが、すぐにレビューを書けなかったのは、同性同士のプラトニック・ラブは分かるような気がしても、肉体まで進んでしまうというのが、ちょっと理解できなかったからです。でも少し時間が経ってみると、愛には男女や親子以外にもいろいろな形があって当然だし、社会もそれを認めることが個人の幸せにつながる‥という作品のメッセージに以前よりは抵抗感が薄れているように思います。世間が彼らの関係を許さなかったので、あのような結末になってしまったのがとても可哀相です。お互いに初めて心を許し合えた二人が、美しいブロークバック・マウンテンの自然の中で誰にも邪魔されずに愛を育めたのはとても幸せだったと思います。クローゼットの中にかけてあるジャックの血のついたダンガリーシャツを見て‘Jack I swear’とつぶやくイニスの心は悲しいけれど、ジャックとの愛が成就できた気持ちもあったのでは‥。

彼らの純粋で深い愛情を見事に観客に伝えたアン・リー監督の手腕は素晴らしいですね。作品は他には「いつか晴れた日に」「グリーン・デスティニー」などがありますが、こんなにも人の心を繊細に美しく描ける監督は他にはいないのでは?と思います。東洋人ならではの優しい視点が感じられます。ミシェル・ウィリアムズが夫の真実を知った時の衝撃やアン・ハサウェイの夫の最後を伝える時の表情などがとても印象深いです。二人の関係にそれほど違和感がなかったのは、若いヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールが一途な思いをイノセントに表現していたからでしょう。西部劇のコンビと言えば「明日に向かって撃て」のブッチとサンダンスを思い出しますが、彼らに負けない魅力のイニスとジャックは映画史上に残る名コンビだと思います。再見する時はもっと細部の描写にも気を配って観ることができたらいいなと思います。

2006.4.19

レント

RENT/2005・米
監督/クリス・コロンブス
出演/アダム・パスカル ロザリオ・ドーソン
    アンソニー・ラップ トレイシー・トムス
    ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア
☆☆☆☆   
 

人生は今を生きること
1989年NYのイーストヴィレッジのロフトに住むルームメイトのロジャー(アダム・パスカル)とマーク(アンソニー・ラップ)は家賃も払えない暮らし。ロッカーのロジャー、映像作家のマーク、ダンサーのミミ、哲学教授のコリンズ、ドラマーのエンジェルは芸術家仲間だ。ロジャーは余命短いだろう人生、何とか名曲を残したいと頑張っている。恋愛、友情、同性愛、エイズ、死をテーマにしたオペラ調ロック・ミュージカル!

RENT(家賃)が払えない貧しい芸術家たち。ミュージシャンとダンサーの出会いとやがて訪れる悲しい別れの設定はプッチニーのオペラ「ラ・ボエーム」が基になっています。オペラに重なる部分も多く詩人ロドルフォはミュージシャンのロジャー、画家マルチェクは映像作家マーク、哲学者コルネーリはコリンズで登場しています。最初に舞台に並んで8人が歌う「SEASONS OF LOVE」は歌詞が素敵でメロディーもインパクトがあっていいですね〜大好きです。‘52万5600分、1年を何で計るの?愛で時を刻み、愛の四季が巡る、友と過ごした1年を祝おう‥’トレイシー・トムスの歌の巧さに引き込まれます。マークとロジャーたちの「RENT」もライフ・カフェでオールキャストで歌われる「LA BIE BOHEME」、最後の「FINALEB」とどれも力強く情熱的です。

ブロードウェイの初演メンバーが6人も集結しているので、歌もダンスも素晴らしいですね。ロック以外にもブルースやゴスペル、タンゴなどを織り交ぜて斬新な構成になっているので、若者に多くの支持が集まること受けあいです。夢のあるミュージカルではなく社会的、現実感に溢れる「RENT」のような作品は珍しいかもしれないですね。1996年頃のエイズに苦しむ若者の姿をリアルに表現していて華やかさよりも人生哲学のような重みを感じました。好き嫌いはあるかもしれませんが、‘人生ははかないけれど、この1瞬々、今を大切に生きよう’と言うメッセージは若者に限らず、老若男女全ての人に通じると思います。作詞、作曲家のジョナサン・ラーソンは自分の舞台を観る前に亡くなったそうですが、ブロードウェイでは今もロングランを続け、こうやって映画にもなって彼の苦労も報われてほんとうに良かったです。

2006.5.14

ナイロビの蜂

The Constant Gardener/2005・英
監督/フェルナンド・メイレレス
出演/レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   コベール・クンデ ダニー・ヒューストン
   ビル・ナイ ピート・ポスルスウェイト
☆☆☆☆☆

奇跡のラブストーリー
外務省一等書記官ジャスティン(レイフ・ファインズ)は講演中、情熱的な熱弁をふるうテッサ(レイチェル・ワイズ)と直ぐに恋に落ちる。アフリカ駐在が決まったジャスティンにテッサは同行。結婚をして身重になる。活動家のテッサはスラム地区などの改善のために積極的に働くが、待望の子供は死産をしてしまう。同じ頃出産直後亡くなった少女の死に疑問を抱いたテッサは医師アーノルド(ユベール・クンデ)と高等弁務官事務所長サンディ(ダニー・ヒューストン)と共に調査を始める。

前評判が良かったし、タイトルにも心惹かれるものがあって観ました。アフリカが舞台のラブストーリーと言ってもドラマチックな場面は少なく、今アフリカが抱える悲惨な現状がドキュメンタリータッチで描かれています。その中で夫婦の愛がとても崇高に描かれていて美しいです。ジャスティンとテッサが出会って、お互いに自分にないものに惹かれたところが素敵。あんな風に自然に結ばれるのは理想ですね。すごいと思ったのはテッサが死産をしても他の赤ん坊にお乳をあげているシーン。とても強い女性です。自分が大変な悲しみの時に、他人の苦しみを理解して助けてあげられる、まるでマザー・テレサのような人‥。彼女の愛は地球規模に偉大で、気持ちだけでなく行動で示したところは、普通の人には真似ができないです。私だったら地震や災害の時にお金を寄付するくらいしかできないですよ。

新薬の人体実験がアフリカで行われているという現実には衝撃を受けました。妻の死を知ってから、今まで庭いじりが好きで大人しい性格だったジャスティンが、テッサの意志を継いで調査を始める雄姿が忘れられません。真相究明に立ち向かうところはサスペンスタッチでドラマを盛り上げていて引き込まれました。難民キャンプに向かう飛行機の中で、ひとりのアフリカ少女を助けたい、今目の前にいる人を助けたいと言う彼の気持ちは尊いです。トゥルカナ湖で降りたジャスティンは‘君をやっと理解できた。君のいる家に帰るよ’とテッサの幻に向かって語りかけるシーンは奇跡のラブストーリーにふさわしいシーンですね。レイフ・ファインズとレイチェル・ワイズは愛し合いながらもお互いの領域を尊重し合う夫婦を見事に演じていました。脇を固めるダニー・ヒューストンやピート・ポスルスウェイトの渋い存在も印象深いです。現代社会を理解し勉強できる素晴らしい作品だと思います。