エディット・ピアフ 愛の讃歌
LA VIE EN ROSE
2007/仏・チェコ・英
監督/オリヴィエ・ダアン
出演/マリオン・コティヤール シルヴィ・テステュー
   ジャン・ピエール・マルタンス ジェラール・ドパルデュー
★★★★★
2007.9.29

歌に生き愛に生きた歌姫
1915年、エディット・ジョバンナ・ガション(エディット・ピアフ)はフランスのパリ、ベルヴィル地区に誕生した。大道芸人と歌手の父と母はエディットの世話はあまりしたがらず、父方の祖母ルイーズの経営する娼館に預けてしまう。3歳の時に失明するが、教会の聖テレーズに祈り続け、奇跡的に光を取り戻す。1935年、街角で歌って生活をしていた時、パリ名門クラブのオーナー、ルイ・ルプレと運命の出会いをする。歌手として世に出た彼女を待ち受けていたのは舞台の成功と華麗な恋、そして失意の日々であった。

ピアフはフランスの偉大なシャンソン歌手であり、ひとりの女性としての可愛さ、強さ、神聖さを持っていたから、今も世界の人々に愛され続けています。恵まれた生い立ちではないけれど、歌手として世に認められた時、全てをさらけ出して生きる勇気、愛することの素晴らしさを全身全霊で歌い、人々に感動を与えた生き様に感銘を受けました。ピアフが成功したのは、過去にこだわらない楽観的な明るさがあったからではないでしょうか。どんなに裕福になっても贅沢よりも友情を大切にしていたので、彼女の周りには困った時は励まし、助けてくれる友人が大勢いました。見出してくれたルプレ、生涯の友人モモ、音楽や礼儀を教えてくれたバリエ、同じ日に亡くなったジャン・コクトー、恋人イブ・モンタン、親友マレーネ・デートリッヒと素晴らしい友人関係を築いています。大勢の人のおかげで成功したので、今度はその恩返しも忘れなかったのですね。

ピアフと言えば「愛の讃歌」を思い浮かべますが、誕生秘話を知ると涙なしでは聴けません。エピソードには諸説あるみたいですが、悲しみも大きくその後は病気がちになっていくようで、短いながらも人生最大の恋だったのでしょう。小柄で細身なのに豊かな声量で、その時の自分の心情を真直ぐに正直に歌に投入するので、聴く人の心に響くのだと思います。これはもう天賦の才能ですね。そしてメロディー以上に歌詞をとても大切にしていたそうです。幼い頃の失明を祈りで救われたので、ロザリオ(十字架)はいつも手放さなかったエピソードも描かれていました。ピアフは雀(すずめ)という意味ですが、美空ひばりに相通じますね。ステージでは容姿もドレスも地味なのが意外でしたが、歌が命という心意気を感じます。「バラ色の人生」「パリの空の下」「ミロール」「回転木馬」など名曲が出てきますが、「愛の讃歌」をもう少し聴きたかったのが正直な気持ちです。

マリオン・コティヤールは20代から亡くなる47歳まで、ピアフになりきって素晴らしいです。澄んだ瞳の可愛い年頃から、マルセル・セルダンと出会った時の輝くような美しさ、亡くなる頃の老けた容貌まで見事にピアフを表現していました。ジェラール・ドパリュデューの出演は嬉しかったです(笑)映画は悲しい場面が多かったですが、歌に恋に生きた楽しい時期もあって、いつも優しい笑顔を絶やさなかったピアフの大ファンになりました。彼女の口ぐせは「愛しなさい」です。女性としての平凡な幸せは得られなかったけれど、そして長生きはできなかったけれど、密度の濃い人生でした。人は打ち込むものがあって、周囲の人々を愛する優しさがあれば幸せな人生を送れると思います。