愛、深き淵より。

星野富弘著

星野富弘さんは、小さい頃から体育が得意で、学生時代はインターカレッジに出場するほどの選手でした。24才の時(赴任して2ヶ月)生徒に体操を教えていた最中に大怪我をして首から下は麻痺してしまいます。この本は壮絶な闘病生活の末、やっと自分の生きる道を見つけた感動の手記です。私は映画やドラマではすぐに涙が出ますが、本を読んで泣くのは久しぶりでした。生きることに不安を抱えている私たちの指針となってくれることを願っています。

*一生、この体で生きなくてはいけないと思った時は号泣してしまった。今までの思い出や全てのものがなくなってもいいから、もう一度だけ子供の頃に登った木の葉の中に戻してほしい。
*自分のこんな姿を母に見せるのがつらかった。今まで元旦にはいつも登山をして実家に戻らなかったけれど、母はどんなに淋しかっただろう。
*入院してから9ヶ月後、初めて病室を出て外の景色を見た時、こんなに美しいものが見られて生きているって素晴らしいと思った。
*周囲の人たちが元気になって退院していく姿を見て、素直に‘おめでとう’と言えない自分が情けなかった。周囲の人が不幸になったら幸福になり、幸福になったら不幸になる‥周囲に左右されない本当の幸福はないのだろうか?
*お見舞いの手紙に自分の言葉でお礼が言いたかった。神さまが本当にいるなら、私のような者でも認めて何か仕事を与えて下さると信じたかった。
*わずかに動く口でスケッチブックに花の絵を描いてみた。構図とか色の使い方など知らないが、神さまが作った自然の花なら、そのままでもきっと素晴らしい調和を持って咲いているはずである。たくさん咲いていると楽しそうでも、ひとつひとつの花は淋しい顔をしている。おまえも人間に似ているなぁ。
*5年間描きためた60枚の絵の展覧会を開くことになった。私の絵は素人なので恥ずかしかったが、見に来てくださった方たちはとても感動して涙が出ましたと言ってくださった。そして全ての絵が売れてしまった。私は自分の描いた絵が社会に暖かく迎えられていると思って嬉しかった。
*私の首のように茎が簡単に折れてしまった花も、そこから芽を出し花を咲かせた。私もこの花と同じ水を飲み、同じ光を受けている。強い茎になろう。

9年間の長い年月を病院で過ごし、自宅に戻られた星野さんは今も美しい絵と詩を書き続けています。それは彼が苦しみの中から花への深い愛情を絵と詩に込めて書くことで生きる証としたのですね。信仰によって支えられ、美しい女性との出会いもあり、今はご夫妻で多くの人たちの心の支えに尽力されています。

ラブレター

チョ・ヒョンジュ チ・ジニ スエ

幼くして両親と別れ叔母に育てられたウジンはやがて孤児院で暮らすことになる。将来は神父になると決めていたウジンは洗礼を受けてアンドレアと呼ばれていた。同じ孤児院のウナはそんなアンドレアに愛情を抱いている。アンドレアとウナは同じ医大に入学。そこで同じ名前の医学生ウジンと出会い、三人の恋愛関係が複雑に絡んでくる。

韓国ドラマには教会がよく出てきますが、「ラブレター」はウジン(洗礼名はアンドレア)がウナとの愛に悩み、神父になるかどうかの葛藤が物語のメインになっているので、毎回のように教会が出てきます。クォン・サンウの「恋する神父」に似ていますが、こちらはコメディー・タッチですが、「ラブレター」はシリアスドラマですね(笑)脚本が「冬のソナタ」のオ・スヨンなので両親同士の恋愛関係が子供たちにも影響して悩むというところが良く似ています。前半はアンドレアとウナの愛、中盤は二人のウジンとウナの三角関係で後半はウナの病気とアンドレアの葛藤が描かれています。それぞれの両親が全て医者という中での2代に渡る恋愛感情が複雑に絡んで見応えがありましたよ。

ウジンはウナを自分のものにしたいという気持ちが強いのに、ウナの心はいつもアンドレアの方に向いている。これってユジンがサンヒョクでなくてミニョンが好きというのに似ています。好きという感情はどうしようもない不思議な感情ですね。ウジン演じるチ・ジニは「チャングム」のミン・ジョンホとは全然違うタイプですぐに怒ったり、泣いたりして感情の起伏が激しいです。でも一途にウナを思う気持ちが素敵で、こんな情熱的な役もできるなんてちょっと意外。アンドレア役のチョ・ヒョンジュは落ち着いてじっくり考えるタイプなので、恋愛にも慎重でじれったいですが、母性本脳をくすぐるタイプかな。複雑な人間ドラマと美しいラブストーリーが描かれてロマンチックですが、エロスとは別のアガペの愛が神聖で、他のドラマにはない清らかさがあったと思います。ラストのどんでん返しはびっくりしましたが、これぞ神の奇跡かもしれませんね。

(全20話)

美しき日々

イ・ビョンホン チェ・ジウ リュ・シウォン

(全24話)

1975年のレコード大賞の夜、ビクトリーレコードのソンチュン社長はライバル会社のヨンジュン社長を殺害してしまう。10年後ソンチュン社長はヨンジュンの未亡人と再婚する。社長の息子ミンチョルはビクトリーで手腕をふるう。その頃、施設ではヨンスとセナの別れの日が近づいていた。やがて出会ったミンチョルとヨンスは愛し合うことになるが、弟のソンジェもヨンスに思いを寄せる。

4話くらいまで暗いスートーリーでしたが、中盤にかけての恋愛・友情の絆が素晴らしかったです。最初は家族関係が複雑なのではまれなかったのですが、親子や兄弟の関係が理解できると、それぞれの苦しみや葛藤が伝わってきましたね。複雑な関係の家族が同じ屋根の下では愛や憎しみが生まれ、大邸宅に暮らしていても幸せな家族とは言えないですよ。そんな中、本当の親子のミョンジャとソンジェ、ミンチョルとミンジの兄妹は心が通じ合って微笑ましいですが、父親は誰からも愛されず、社長の椅子だけが生き甲斐みたいな姿には哀れさえ感じてしまいます。施設で姉妹のように育った、ヨンスとセナの絆がとても強くて、歌手志望のセナをいつも心配して世話をするヨンスの優しく健気な姿は感動的です。ビクトリーレコードで知り合ったナレはそんなふたりをいつも気にして、病気の時は看病をして、困った時は助けてあげる頼りがいのある女性です。ヨンス・ナレ・セナの友情は見ていて心が熱くなりましたね。

ミンチョルとヨンスの恋がうまく進まず、ソンジェとの三角関係も痛々しいです。ミンチョルが父親の過去の事実を知った時から、素直にヨンスを愛せなくなってしまいますが、ソンジェもこの事実を知って動揺を隠せなく実の母も自殺をしてしまいます。家庭崩壊、ビクトリー倒産で社長は全てを失なってしまいますが、この世の栄枯盛衰を感じますね。でも妹のミンジはそんな父親でも見離すことができなくて、やはり家族っていいなって思います。ミンチョルとヨンスが別れを決意したころ、ヨンスの病気が発覚します。ここからばらばらになっていたみんなの気持ちがひとつになっていきます。人と人の絆、人はみんな支えあって生きているのだということを実感させてくれます。ミンチョルもソンジェもヨンスを助けたい一心、男女の愛を越えた無償の愛なので感動も大きいです。最後まで諦めないで病気と闘ったヨンスと周囲の励ましがとても印象に残りました。若者たちの生きる上での悩みや葛藤、愛と友情が美しく描かれ、まさにタイトルの意味が納得できますね。ZEROが歌うテーマ曲「約束」も素敵でした。

「一豊の妻」が教えてくれた幸せな生き方

大原敬子著

NHK大河ドラマ「巧妙が辻」は毎週観ています。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の時代は今までに何度もドラマになっていますが、山内一豊を誠心誠意支えた聡明な千代の内助の功に光を当てたドラマは新鮮で見応え十分です。一豊は初めは信長に仕え後に秀吉、彼の死後は家康に従って遂には土佐の国を治める大名の地位を得ています。著者の大原敬子さんは若い頃から千代の生き方を先生として学んできたそうです。社会で戦っている夫に対してどのように接したら良いかなど、著者のアドバイスはいろいろ参考になると思います。

<執着心のないすがすがしい男性を選びなさい>
一豊は信長や秀吉のような派手さはなかったけれど、誠実で素直で物事に執着しない男性だったそうです。千代は出世頭ではないけれど、一豊のそういう美点を上手に育てて幸せを見出した女性ですね。男性には派手なパフォーマンスで生きるタイプとこつこつと自分に与えられた仕事をこなしているタイプがありますが、一豊や家康は一歩一歩ひたすら歩き続ける農夫タイプです。彼らの良さも認めてあげましょう。
<明るい人間に不運は訪れない>
何事も明るく陽気に考えれば幸せはこちらにやってきます。どんなに大変なことに出会っても、楽観的に肯定的に考えた方が物事はうまく解決することが多いのです。一豊は千代の明るさと安らぎに癒されたこそ、側室を置かず生涯千代ひとりを愛し続けられたのでしょう。妻が陽気であれば、男は安心して自分をさらけ出し、強さを発揮できるのです。
<褒め上手は人も自分も幸せにする>
いくつになっても自分を褒めてもらうのは嬉しいものです。夫だけでなく、どのような人間関係でも相手の長所を見てつき合えば、相手も自分の良いところを見てくれて、お互いに信頼関係が生まれます。相手を信じられる人は心身に余裕があり、たとえ裏切られたとしてもそれに耐える強さを持っています。どんな人にも弱点や欠点があって、自分も完全無欠な人間ではないのです。損得、利害で男性を愛する女性は男性の愛を得ることはできません。
<幸福は人と比べるものではありません>
千代も若い頃は何かと他人と比較をして喜んだり、悲しんだりしていました。自分の亭主よりも秀吉の方に男性としての魅力を感じていた時もあったそうです。そうやって比べることで人は満足したり、不満足になったり心変わりをします。どんなにお金持ちになっても、出世をしても、愛する人と一緒になれても、そこに感謝の心がなければ、また次の欲望を求めてしまいます。しみじみ感じる幸せは、今ここに存在している自分に感謝した時にあるのかもしれません。

千代は自分の幸せのために生きた女性です。夫のため、人のためにと思うと恩着せがましくなりますが、すべて自分のためと思えば、不満も愚痴も出ず何事も受け入れることができます。一度かぎりの人生、生きていて良かったと心から思える幸せを掴みましょう。他にも様々な生き方の知恵が5章、31項目にわたって書かれていますので、是非読んでみてください。