登場人物が、ほとんど僕(徳永)と先輩(神谷)の二人だけなのが、新鮮な驚きでした。
出会いのシーンから始まって、飲みに行ったり、家に遊びに行ったり、全編二人の会話で終始します。
神谷が、徳永に漫才とはこういうものと教える会話がほとんどで、楽しいけれど退屈と思う人もいるかもです。
私は、一つ一つの文章がよく練られ、味があって、非凡な才能が感じられる「火花」は大好きです。
神谷のせりふには、又吉さんの漫才とはこうありたいという願望が込められているのだと思います。

神谷のせりふは、ほんとうに辛辣でドキッとしますが、これが又吉さんの考えだったら、彼のイメージはこわれますね(笑) 
でもすごい面白いせりふもいっぱいあるので、やっぱり、又吉さんは好きだな〜って思います。
徳永は標準語だけれど、神谷は大阪弁なので、辛辣なせりふもどこかほっとします。
神谷が「新渡戸稲造がすごい!」というところは、父も新渡戸氏を尊敬していましたので、嬉しかったです。
神谷は、漫才を通して人生哲学みたいなものも教えますが、これがなかなか興味深いです。

二人は、意気投合してよく電話やメールの交換をしますが、男の友情もなかなかいいですね。
神谷と同居している真樹という人が登場しますが、彼女を見ていると、又吉さんの理想の女性のタイプがわかりますね。
彼は、たぶん良妻賢母タイプの女性が好きなのでは?と思ってしまいます。一歩下がって男性についていくような…。
神谷の自分の生き方や考えは絶対変えない、人の顔色を見て生きたくない…これも又吉さんの願望のなのでは?
芸人としての又吉さん、大好きですが、作家としての又吉さんも素敵なので、これからも応援したいと思います。

火花

又吉直樹

アンのゆりかご 村岡花子の生涯


村岡恵理


茂木健一郎の
脳が
ときめく
言葉の魔法

浅子と旅する

中尾裕子 
フォレストブックス編集部

朝ドラ「あさが来た」を観て、広岡浅子さんのことを初めて知りました。当時、時代や社会の変化をしっかりと見つめ
力強く運命を切り開いていった彼女の生き様に感動しました。浅子さんの実家が現在の三井財閥の家系の
大富豪とは、びっくりぽんです^^ 子供の頃から、お稽事より、木登りやそろばんが好きという生まれ持った資質が
彼女を事業や学問への道に導いたのだと思います。当時の重鎮たちと会う時も、女だから諦めるということはなくて
対等に渡り合ったそうですよ。なかなかできないことですね。

彼女が女子教育に力を入れたのは、女性が人間としての尊厳を与えられていなかった社会を
変えたいというのが、大きな理由になっているのですね。
一夫多妻制で異母兄弟、姉妹が当たり前の家族構成だったというのは、ちょっと驚きです。
日本初の女子大学設立には、様々な著名人が奔走していますが、浅子さんも物心共に多大な貢献をしています。
ドラマで瀬戸康史さん演じる成澤泉氏は、日本女子大の設立者、成瀬仁蔵氏なんですね。
今、私たち女性が、何の偏見もなく学問や芸術を学べるのは、浅子さんの尽力のおかげだと思います。

浅子さんは、60歳を過ぎた頃に、乳がんになり手術を受けました。当時は今のように良い薬もなかったので
治療はたいへんだったと思います。でも持ち前の頑張りで大病を乗り越えたのはさすがですね。
でも病気を体験したことで、浅子さんの気持ちに変化が起き始めたようです。
これまでずけずけとものを言う自分の傲慢さが、恥ずかしく思うようになったと書かれています。
そこからキリスト教への道が開かれたようですね。仕事は娘婿に任せて、信仰を深めていきました。
晩年は、軽井沢で女性たちを集めて勉強会を開きましたが、「花子とアン」の村岡花子さんも参加しています。
自分の世界を飛び出して、大きな世界で偉業を成し遂げた浅子さんのことを知ることができて幸せです。



昨年末に読み終えて、素晴らしい内容でしたので、少し感想を書きます。
著者は花子の孫の村岡恵理さんです。姉は翻訳家の村岡美枝さんです。
本書はドラマと違うところも多くて、ドラマと実際を比較しながら読むのが楽しかったです。
幼少期、5歳の時に甲府から一家で上京したのは、意外でしたね。
ドラマでは、晩年まで甲府の実家が、花子の心のよりどころとして描かれていて
“こぴっと”や“がんばれっし”という方言が心地良かったですけれど。

10歳の時に父親の強い勧めで、修和女学校に給費生として入学しています。
成績が悪いとすぐに退学になるので、とても勉学に励んだそうですよ。
洗礼を受けていることが条件でしたが、花子は2歳の時に幼児洗礼を受けているので
すぐに入学は許されたようです。後に伴侶となる村岡英治の父親は聖書の本を印刷制作していたので
二人の出会いや結婚は、キリスト教の信者という絆も大きく影響したのだと思います。

ドラマでは、家族の絆と白蓮との友情が中心に描かれていましたが、本書では市川房江、林芙美子
宇野千代など高名な政治家、作家たちと華やかな交流があったと書かれていて驚きました。
ヘレン・ケラーが来日した時には、通訳も務めています。語学力も認められていたのですね。
ドラマ以上に信念を持って働く女性としての姿が印象的です。

花子と英治はおしどり夫婦として知られ、英治のラブレターは読むのがちょっと恥ずかしいくらいの内容です(笑)
長男の歩の死は、到底受け入れられない出来事で、神を呪ってしばらく何も手につかなかったようです。
でも聖書を読むうちに子供を失ったことの意味を知り、自分の母性を世の子供たちに役に立てようと
決心するところは、感動しましたね。

著者の理恵さんは、花子が亡くなる1年前に生まれていますので、祖母の記憶はほとんどないと思います。
娘のみどりさんから、いろいろなお話を聞いて育たれたのでしょうね。
今は姉の美枝さんと「赤毛のアン・記念館」「村岡花子文庫」の保存に尽力されています。
花子は生涯を通じて、家庭文学を世に広めたいという思いで翻訳の仕事をしています。
晩年に憧れのプリンス・エドワード島への旅行を計画していましたが、実現できなかったのは残念だったでしょう。
「赤毛のアン」をはじめ、数々の名作の素敵な翻訳本をありがとうございました。

体調が今一でしたが、茂木健一郎さんのお話が聞きたくて、講演会に行きましたが
思いがけず、直筆のサイン入り本が当選して、行って良かったです(笑)
帰宅して、早速読みましたが、文章は分かり易く、3ページごとに
茂木さんのイラストが、まるまる1ページ載っていて、とても読み易い本でした。
頭の良い方は、知識や教養を自慢するのではなく、子供が読んでも理解できるように
優しい文章で書いてくださるように思います。
超エリートなのに、口調は穏やかで、受ける印象は優しくソフトな方というのが
何とも素敵ですね。

NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」の司会をしていた時に、彼が感じたことは
成功者は、みんな社会や人の役に立ちたいという動機から始まっているということでした。
人は、自分のためではなく、人のためにと思う方が頑張れるということでしょうか。
面白かったのは、英語力をつけるために最初に読んだ本が、「赤毛のアン」だったそうです。
難しかったそうですが、読破した時は、ドーパミンがものすごく出て、その後の英語力に
大きな影響を与えたそうですよ。これは講演会でお話されていたことですが
「赤毛のアン」の脚本家の方とお友達で、浅田美代子さんが演じた寮母さんのお名前の
茂木のり子は、自分の名前が使われたと嬉しそうにおっしゃっていました(笑)

人生を楽しくするのは、人といかにつき合うかにつきると書いています。
茂木さんのような方は、自分の世界を大切にされるので、他人に対しては
わりと無頓着なのではと思っていましたので、ちょっと意外でした。
お猿さんが毛づくろいをするのは、人とおつき合いするのと同じで
毛づくろいをするお猿さんが多い猿ほど、元気で人気者だそうです。
人も一匹オオカミのようなタイプよりも、たくさんの友人、知人に囲まれて
仕事をする人の方が、社会で伸びていくそうです。
そして、ほんとうの友人とは、逆行に立っている時に助けてくれる人、元気?と
声をかけてくれる人と書いています。私もそういう人になりたいです。
人はいくつになっても学べるし、才能を伸ばすことができるということは
年齢を重ねた者にとっても、希望と喜びを与えてくれます。
この本は、何歳の人が読んでも、生きる上でためになること満載なので、お勧めします。

茂木健一郎著

「暮しの手帖」とわたし

大橋鎮子