トスカーナの休日 (2003・米)

信じていた夫に裏切られ、家を出ていくことになったフランシスがイタリアのトスカーナに移住して新たな人生を切り開いてゆく心暖まる物語。

イタリアは旅行の経験もあって大好きな国なので、トスカーナの町を舞台に繰り広げられるドラマはとても気持ち良く観ることができました。ブラマソーレ(太陽の憧れ)という名の売家を修繕することで心の傷も癒したいフランシスの気持ちはすごくよく理解できます。誰も知り合いのいない土地で古家に独りで住むのはとても勇気がいること(私にはとても真似ができないですよ)でも心優しい管理人のマルティニや大工さんたちとの交流で生活が豊かになってゆく過程が微笑ましく描かれていて素敵です。イタリアは映画や音楽が大好きで陽気な人たちが多いので彼女は救われたのでしょうね。やっと巡り会えたと思っていた恋人とも別れ、意気消沈していた時に若い恋人たちのキューピットになってあげるフランシス‥。自分の失恋の痛みがあるからこそできる行動かもしれません。パーティでは新たな男性との出会いもあって幸せを見つけることろはとてもロマンチックなので女性なら誰でもHappyな気持ちになれますね。パティとの友情も素敵。苦しい時も楽しい時も聖母マリアに祈っていたから願いが叶えられたのでしょうか?ダイアン・レインの切ない、悲しい、嬉しい時の表情が素晴らしいです。全編彼女の魅力が輝いていますね。

監督 オードリー・ウェルズ
出演 ダイアン・レイン
    ラウル・ボーヴァ
    サンドラ・オー
    

グランド・ホテル (1932・米)

監督 エドムンド・グールディング
出演 グレタ・ガルボ 
    ジョン・バリモア 
    ジョーン・クロフォード 
    ライオネル・バリモア

ベルリンの超一流ホテル グランドホテルの宿泊客たち。一見華やかな顔の裏には様々な悩みを抱えた人々の織り成す虚実のドラマがスリリングに映し出される。

三谷監督の「THE有頂天ホテル」のタイトルがハリウッド映画「グランド・ホテル」とフレッド・アステアの「有頂天時代」からつけられているそうですが、数年前に偶然「グランド・ホテル」のビデオを買っていましたので今回観ました。テイストは同じような全然違うような感じなんですが(笑)どちらもホテル内での様々な人間模様が描かれています。「グランド・ホテル」は登場人物はそんなに多くはなく、殺人も絡んでいるのでストーリーはシビアです。監督のメッセージも微妙に違うかもしれませんね。グレタ・ガルボをはじめ当時のスターが総出演していて、その後スター競演作は「グランド・ホテル形式」と呼ばれたそうです。人気にかげりが出始めたバレリーナ、グルシンスカヤは演歌歌手の西田さんに通じるキャラクターですね。演じたグレタ・ガルボの気品のある美しさ、パフォーマンスに見とれてしまいました。お金に困っているタイピストのフレムヒェンは余命いくばくもない会計係のクリンゲライと結婚をすることに‥。一見お金持ちの男爵ガイゲルンは貧しくて、グルンシスカヤの部屋に忍び込んで宝石を盗んだりとそれぞれの人生が悲喜こもごも描かれています。どのスターも存在感がありますね。グランド・ホテルは人々が来ては去ってゆく何事もなく‥とラストで語られ味わい深い名作になっています。

home theater

放浪記 (1962・日)

監督 成瀬巳喜男
出演 高峰秀子 
    宝田明 
    加藤大介
 

少女時代から母と貧しい生活をする中で、詩や小説を書いて作家への夢を持ち続けた林芙美子の自叙伝の映画化

「放浪記」は森光子さんのロングランの舞台が有名ですが、今回初めて成瀬、高峰の名コンビの「放浪記」を観ることができました。少女から成人して作家として成功するまでが日記形式で語られています。母娘で行商をしながらの生活はいつも貧しく空腹で、望みといえば美味しいものが食べたい‥そればかりでした。成人してからカフェなどで働き続けてもいっこうに暮らしは楽にならないけれど、明るい性格が苦難を乗り越える原動力になっているのですね。詩や小説の才能があったから暇を見つけては書いて、いつか作家になるという夢が彼女を支えていたのだと思います。好きになった男性に一生懸命尽くすふみ子は健気で可愛い女性ですね。男運が悪いのが可哀相‥。でも好き合った男性と別れても、けんかをしてお店をやめても、明日は明日の風が吹く(風と共に去りぬのスカーレットのように)いつもバイタリティーで乗り越えたふみ子の人生。ネバー・ギブ・アップの精神ですね。自分を助けるのは自分、生まれる時も死ぬ時もひとり‥と芙美子は言っていますが、生きる道中いろんな人に助けられ、慰められてきたから孤独の人ではなかったし、作家としての道も開けたのではないでしょうか。高峰秀子さんは「浮雲」のゆき子とは全然違う印象で芙美子になりきっています。お店でおやじに啖呵をきるところや、男性と別れるときの悔し涙を流すところなど名演ですね。若くて美男の宝田明さんのだめ亭主っぷりも素晴らしかったです。生涯ふみ子を物心共に援助してくれた安岡を演じた加東大介さんの味のある名演も忘れられないです。‘花の命は短くて苦しきことのみ多かりき’は芙美子自身と重なり切ないですね。




純愛中毒 (2002・韓)

監督 パク・ヨンフン
出演 イ・ビョンホン
    イ・ミヨン
    イ・オル


兄嫁に恋心を抱き続けるテジンは兄ホジンと同時刻に事故に会い、1年後目覚めたテジンは兄の魂が宿っているかのよう。兄嫁ウンスとテジンとの危うくも心揺さぶる純愛ドラマ

タイトルやパンフレットの表紙が素敵なのでずっと観たかった作品です。全体にしっとりとした恋の情念が流れとても心地良いテイストのドラマになっています。家具アーティストの兄とカーレーサーの弟は幼い頃に両親を失くしているのでとても仲が良く、冒頭のシーンはそんな兄弟愛がほのぼのとしていいです。兄のホジンが雨の中、地下鉄の駅に妻のウンスを迎えに行くシーンや、3人が住む田園の落ち着いた一軒家のたたずまいなども情緒があって素敵ですね。でも兄、弟が事故に会ったところから兄嫁と義弟の禁断の愛へと向かっていく後半はかなり危険で独特な味わいがあって引き込まれましたよ。兄の仕事を継いで、しぐさや言動もホジンそっくりのテジン。どうなってるのだろうとどきどきしながら観てました。父からもらった鳳仙花のペンダントを見て真実を知った時のウンスの驚き‥。最後のどんでん返しには心が熱くなりますね。イ・ビョンホンの一途な想いをストイックに演じて上手でしたが、兄嫁のウンスの清楚な優しさが心に残りました。そして兄のホジンの包み込むような暖かさも大好きです。小道具の使い方も粋です。繊細でストイックな愛の妙味に酔わされました。

ポセイドン・アドベンチャー(1972・米

監督 ロナルド・ニーム
出演 ジーン・ハックマン
    アーネスト・ボーグナイン
    シェリー・ウィンターズ


大津波に襲われた豪華客船ポセイドン号。乗客たちのほとんどが犠牲になる中、ひとりの牧師が船底に向かう。愛と勇気の海洋アクション・スペクタクル。

34年ぶりのリメイクを観て、久しぶりにオリジナルを観ました。CGはまだ発達していない時代なのに、波や炎、転覆のシーンは現代版よりももっと重量感、スペクタクル感がありますね。遭難前の30分間、かつての警部と妻、仲の良い老夫婦、遊学を楽しむ姉弟、歌手たちの人間模様が丁寧に描かれているので、その後のサバイバルがとても味わい深いです。何と言ってもみんなを生へと導くスコット牧師が男らしくてほれぼれしますね。‘苦しい時には神に祈らないで、苦難に立ち向かえ’と演説して異端派牧師の血気さかんな彼に、まだ10代の私は彼に恋する娘スーザンになったような気持ちで観てました。今はもう年のせいか、毎日神さまに祈りたいという気持ちですが(笑)アーネスト・ボーグナインとの迫真のやりとり、みんなのために命を捧げたシェリー・ウィンターズの名演も忘れられません。私は海や船は怖いのに、「ポセイドン・アドベンチャー」や「タイタニック」のような作品が好きなのは、愛する人のために自らを犠牲にするところに感動してしまうからです。自分なら絶対そんな勇気はないのに、彼らの行動はまるで神さまのようなので、尊敬してしまいます。今回も人間ドラマの素晴らしさに涙してしまいました。パンフレットには小森のおばちゃまと淀川長治氏の絶賛の解説が載ってました。